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材料基礎

材料力学の最初の一歩は

「世の中にどのような材料があるのかを知ること」

 

ここに示す材料はほんの一部ではありますが、機械用材料としては代表的な材料を挙げました。

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[1]各種金属材料の密度とヤング率

鉄鋼(SS材)、ステンレス鋼、アルミ合金の

密度とヤング率(縦弾性係数)の比較です。

 

鉄・ステン・アルミそれぞれ大まかな数値としては、

◆密度

 鉄・ステンレス    約7.9g/c㎡

 アルミ(鉄の1/3) 約2.7g/c㎡

 

◆ヤング率

 鉄・ステンレス    約200GPa

 アルミ(鉄の1/3) 約70GPa

 

大まかな価格の比較目安は鉄を1とすると・・・

 ステン 3~4

 アルミ 4~5

*価格比較はあくまで参考です。


[2]鉄鋼材料、ステンレス鋼、アルミ合金それぞれの主な鋼種の機械的強度です。

◆構造用鉄鋼材料

◆代表的な構造用としてはSS材、SM材、SN材があります。
 SS***、SM***、SN***

 ***にはいずれも数値が入り、それはそのまま引張り強さを表します。

 

 例:SS400の引張強さ⇒400N/m㎡

 

 

◆機械構造用炭素鋼鋼材 S**C  例:S45C

 数値は炭素の含有量を示します。炭素の量で硬さが決まります。

 また焼き入れ焼き戻しにより硬さを調整することができます。

 歯車やクランクシャフト、ピン、ロッド、カムなど様々な機械部品に使われています。

 

◆炭素工具鋼鋼材    SK** 例:SK90

 炭素量が0.6%~1.5%のもの。S**Cとの線引きは炭素量0.6%を超えるか否か。

 焼き入れ焼き戻しにより硬さを調整することができます。

 やすり、かみそりの刃、斧、たがね、のこ、プレス型、刻印などに使われます。

 

◆他にもSKHやSKSなどありますが、刃物や工具などと用途を絞り、それに合わせた

 特性(おもに硬度と焼き入れ性)が規定されています。

 

一般的な機械設計であればSS材とSS**C材を抑えておき、通常の構造物はSS材、

硬度・摩耗性が欲しい場合はS**C材と使い分けるといいでしょう。

 

 


 

◆SS材とは

 一般構造用鋼(Structure Steal)のこと

 

特にSS400が一般的です。

つまり流通性(入手のしやすさや価格)がSS材の中では

最も優れています。

 

SS400は溶接性も優れていますが、板厚が50㎜を超えるもの、

SS490・SS540などの高強度材を使いたい場合はSM材を

使うのが良いです。

 

 

◆SM材とは

 溶接構造用圧延鋼材(Steal Marine)のこと

 

溶接は英語でwelding。なぜMarineか?

船舶用に溶接性のよい材料をとのことから開発された経緯が

あるためマリーンとつけられています。

 

ではなぜ船舶用か?第一次世界大戦中にそれまではリベット

で製造されていた鉄鋼船を溶接で製造することになり、

水密性や生産性などが飛躍的に向上した歴史があります。

 

つまり溶接は船舶の製造技術だった背景があるからです。

 

*溶接強度に関しては別途解説ページを作成予定です。

 

 

このほかに構造用鋼としてはSN材があります。(建築構造用圧延鋼材)

耐震性を考慮した建築物に使われる材料のため機械設計者が選定することはほぼないと思いますが、

簡単に紹介しておきます。

 

◆SN材

 建築構造用圧延鋼材(Steal New)のこと

 

かつては建築物にSS材が使われていたのですがそれに代わる新しい素材としてNewとつけられています。

とはいえSN材が世に出たのは1994年で、そこまで新しいわけではありません。

 

最大の特徴は降伏点に上限が設けられたこと。

降伏点に上限が設けられたことで地震が起きた際にいきなり鋼材が折れることがなく、確実にまず変形してくれるため

ある程度のエネルギー吸収が可能となることが特徴です。

 

◆ステンレス鋼

 

◆ステンレス鋼

ステンレス=Stain-Less-Steal(ステイン-レス-スチール)

つまりさびにくい鋼材のこと。

決してさびないわけではないです。

 

熱処理により組織構造を変成させることで、

オーステナイト系とフェライト系、あるいは二層組織

もしくはマルテンサイト系を持ちます。

 

 

 

 

◆オーステナイト系(SUS3XX:代表例SUS304) 

もっとも一般的な組織で広く各種用途として使われる。

通常は常温では存在しませんが、高温に加熱しNiなどの合金元素を加えて急冷却することで得られます。

基本的に非磁性(磁石がくっつかない)材料ですが、冷間加工を行うと磁性を持つことがあります。

オーステナイト系は延性・靭性に優れるため深絞りや曲げ加工などの冷間加工はよく行われます。

500℃以上に加熱されると粒界腐食が発生します。

これを防ぐために炭素量を抑えたローカーボン材があります。

つまり通常の材料を溶接すると粒界腐食を起こすことがあるため、溶接材としてはローカーボン材を選定する

のが良いとなります。

 

◆フェライト系(SUS430、SUS444など )

常温で存在します。

強磁性を示します。

ステンレスは磁石がくっつかないと思われがちですが、フェライト系はくっつきます。

一般的にオーステナイト系と比べると耐食性に劣りますが、最近は耐食性に優れた高純度フェライト系が開発され

オーステナイト系からの代替もされています。

 

◆オーステナイト・フェライト系(SUS329J4L)

両方の組織を持ちます。

耐海水性や耐応力腐食割れ性に優れており、そのうえ強度も高いという性質があります。

 

 

◆マルテンサイト系(SUS403、SUS416など)

最大の特徴は焼き入れで硬化させることができることです。

焼き入れあるいは焼き戻し、焼きなましの条件を適切に選ぶことで、目的の性質を得ることができます。

代表例はベアリング鋼などに使われるSUS440(18クロム高炭素)があります。

 

◆アルミ合金

 

◆アルミ合金

機械構造物に使われる非鉄金属の代表格です。

最大の特徴は軽さ。密度は鉄の約1/3です。

 

切削性、プレス成形性、鋳造性、など加工性にも

優れています。

 

ただし、鉄鋼材料に比べてネバっこいので刃物の

選定と回転数などの設定を適切にしないと切粉が

刃物に溶着してしまいます。