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私が技術士試験を1発で合格した経験を公開します。

◆技術士受験体験記

はじめに

私が技術士を受けようと思ったきっかけは、群馬大学大学院の修了式で一人の教授が「技術者として仕事していくのなら技術士を目指しなさい。」と言っていたことが始まりです。

 

その後、就職先の上司に「自己啓発として何か資格とるように」と言われました。そこで私は技術士機械部門を目指します。と答えたのですが「あんな難しい資格絶対無理や。電験3種にしとき」と言われました。そして2年がかりで電験3種を取り、次に通信教育で統計士を取ったりしました。

でも、当時の上司から言われた「絶対無理」という言葉が私の中でずっとくすぶっていました。

 

働き出して4年目くらいの2008年にうつ病にかかり6カ月病欠したのですが、何とか乗り越えて回復期に一念発起で資格に挑戦を決意。技術士取得を目指すことが一つのモチベーションになりました。

 

2008年 うつ病発症 6か月の病欠

2009年 うつ病から回復 技術士に挑戦することを決意!

2010年 技術士機械部門 一次試験合格

2011年 技術士機械部門 二次試験合格

 

2012年 3月 技術士機械部門登録

 

*最後におまけで「論文の書き方」を掲載しています。

(1)1次試験

一次試験は「知識量」と「知識の応用力」が問われます。1年間の計画をたててひたすら過去問や予想問題を解いては解答を見ることを繰り返しました。

この繰り返しはやみくもにやったわけではなく、解いた問題を〇△×に分けました。

 〇 確実に解ける。 

 △ ある程度分かるが解けない。

 X 解けない。

〇の項目は次の繰り返し時には飛ばす。△と×に集中して解答し、解説を読み込みました。3回、4回と繰り返すと「△→〇」に、「X→〇や△」になっていきました。

これは知識が自分の中に定着化してきた証拠と思って頑張りました。

 

このときいくらやっても×のままの問題も残りました。これは思い切って諦めました。当時の私は熱伝導や熱伝達、熱流束関係の出題は思い切って諦めることとしていました。

 

当時私は大阪技術振興協会・技術士育成委員会の講座に通っており、そこで使用していた予想問題と過去問題を何度も何度も解きました。
写真 当時のテキストの書き込み

当時私は大阪技術振興協会・技術士育成委員会の講座に通っており、そこで使用していた予想問題と過去問題を何度も何度も解きました。



【コラム】勉強時間の確保

仕事が忙しい中、勉強時間をどのように確保したのか?

答えは簡単。早起きしました。

朝5時~6時半までは勉強時間に当てました。

また、業務が無い土曜日を勉強時間に当てました。日曜日は休む。

 

2次試験の時は自分で書いたキーワード解説や業務論文を読み上げて録音し、それを通勤時間に聞き流したりしていました。その日聞き流した内容は夜に10分くらいで読み返すということを繰り返していました。

 

コラム終わり


(2)2次試験

1次試験に合格すると修習技術者(あるいは技術士補)という扱いになり、技術士会に準会員として登録できます。

技術士会が主催する様々な会合に参加することができます。(実は会員外でも参加はできます。)

修習技術者向けの会合もあります。私はいくつかの会合に出て知り合った同じ修習技術者の方と交流を持ち、当時は入試願書に技術的体験論文が必要だったのですが、知り合った方と互いの論文を(可能な範囲で)見せあって意見を交換したりしていました。また、大阪技術振興協会の講座に通い添削していただいたり、技術士会の会合で知り合った技術士の方にお願いして添削していただいたりしていました。

 

具体的に1月~7月の筆記試験、12月の口頭試験まで、時系列でやったことを書き出していきます。

 ①キーワード集の作成

 ②体験論文の作成(*2020年現在、体験論文はありません。)

 ③過去問対策

 ④予想問題の解答

 ⑤仕上げ

 

①キーワード集の作成(目安:1~2月)

 

とにかくキーワードをたくさん集めて、その解説を自分で作成しました。キーワード解説書を買ってきて読み込むのもやりましたが、その後に必ずいくつかのキーワードをピックアップして自分の言葉で書き出すということをやっていました。


【コラム】キーワード集と解説の一例

2次試験勉強時に作成したキーワード一覧表。パラレルメカニズムやFMEA、安全工学などの言葉が並ぶ
エクセルにキーワードを書き出してそれぞれの解説を別途作成していた。

1パラレルメカニズムの解説

[定義]    

パラレルメカニズムとは、ベースプレートとエンドエフェクタが並列(パラレル)に並んだ複数のリンク機構によって接続された閉リンク機構のことをいう。       

長所として2点。

 ①剛性が高い(エンドエフェクタへの力が分散されるため外力による変形が開リンク機構に比べて小さい)

 ②アクチュエータの力が合成されるので出力の小さいアクチュエータが使用可能

などがある。

短所として2

 ①可動範囲が非常に小さい、

 ②性格に位置制御をするためには制御計算が複雑で処理に時間がかかる

などがある。

[応用例]

三次元塑性加工システム:パイプなどの中空材を使った複雑な三次元曲げ加工が実現可能。中空材は重量に対して剛性が高いため、軽量化、省資源化、コスト低減につながる。       

  *誤字も当時の原文ままです。

 

*コラム終わり


②体験論文の作成(目安:3月)

自分の業務から3つテーマを絞り、体験論文を書いていました。書きあがったものを誰かに見てもらい、わかり難い部分の修正を繰り返していました。論文の原稿は技術士会でダウンロードできたのでそれを使って手書きで書いていました。

最終的に熱CVD装置を開発した例を書きました。例えばその中で「あ!これってフールプルーフの一つだよな。」という気づきがありました。というよりもそれまでの私はフールプルーフというものをよくわかっていなかったということです。ある部分がフールプルーフと気づいたからと言って論文の中に「フールプルーフをやりました」とは書きません。「○○部に△△を取り付けて××の状態にならないと装置が動かないように設計した」といった感じで、やったことを記述するように心がけました。

 

③過去問対策(目安:4月~5月)

上記①、②の継続と過去問を見て解答を書いていました。

1週間に1~2問のペースです。書いた論文は可能な限りたくさんの人に添削してもらうようにしていました。

 

 

④予想問題の解答(目安:5月~6月)

私が受験した2011年度は3月に東日本大震災がありました。当然、リスクマネジメント・リスクアセスメントや本質安全設計などの安全に関する問題が出ることが予想されたため、重点的に対策を行いました。

2人目の子どもが生まれたときに、いろいろ整理して処分してしまったのですが、当時は新聞や雑誌切り抜きに自分なりの解説を書き記したりと、時事問題にもしっかりとアンテナを張って対策をしていました。

 

 


【コラム】当時、練習で書いた論文

当時、私が練習で書いていた論文その1 デジタルエンジニアリングについて
写真 論文練習その1

「黒い論文」の典型。

ついつい紙面を全て埋めようとしてしまうが、ある程度の余白が無いと読みにくい。多くの人がやってしまう失敗。

読み手も人間なので内容以前に見た目が悪いと読む気が失せる。

 

また、この例では問題文でデジタルエンジニアリングについて問われているのに対し、解答文の「はじめに」でデジタルエンジニアリングについて解説している。知識量のアピールをしたくなるのは分かるが、読み手はその道のプロフェッショナル。キーワード解説的な文章は不要。デジタルエンジニアリングの具体例が必要。

私の場合はAccessを使って技術文書の検索システムを作った例などを具体例として書くようにした。

 

 


当時、私が練習で書いていた論文その2 質的充足について
写真2 論文練習その2

内容は一旦置いておいて、図の挿入や箇条書きによる思い切った改行を行って黒い論文からの脱却を図っている。

 

内容は設備の増設ではなく、改造による能力アップで増設という量的充足ではなく能力アップという質的充足を図った事例の解説。

 

最近はデジタルエンジニアリングという単語も設計の質的充足という単語もあまり聞かなくなった。

その代わりにAI、IoT、DXと言った単語をよく聞くようになった。

 



⑤仕上げ(7月~筆記試験当日)

ここまでである程度、自分が書けることが把握できたので書いたものを見直したり、文章や図表を手書きで書く練習を行っていました。

筆記試験が終わってから口頭試験まではしばらく間が空きます。私は12月初旬に受けましたが、年明けの1月に受験された方もいます。

筆記試験が終わってすぐは手ごたえを感じていたのですが、家に帰る途中でだんだんと不安になってきました。家に着くころにはすっかり自信を無くしていて、受験のことは考えないようにしようとしていました。これは失敗、受験の問題と解答を振り返る作業をすべきでした。なぜなら筆記に受かっていたら次は口頭試験があります。万が一、ダメだったとしても来年の準備はすでに始まっています。

私は筆記試験に合格していたので通知をもらってから一生懸命に受験の内容を思い返していました。口頭試験で落ちる方はほとんどいないと言われていますが、何人かは落ちる方がいます。筆記を受験した当日に解答を書き起こしておかなかったことを後悔しました。

 

迎えた口頭試験当日、口頭試験は面接ではないので質問をされます。私は2つの質問を明確に覚えています。

 

質問その1「メムスについて教えてください。」(知識を問うタイプ)

「はい、メムスとはMicro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)のことで、微細な機械構造と電子回路を集積したデバイスのことを言います。その応用例としてプリンターヘッドや携帯電話に使われる各種センサーなどがあります。」

  

 とは答えられず、当時の私は「すみません。勉強不足でわかりません。」と答えました。実際に恥ずかしながらメムスはその時が初耳でした。

 

 

質問その2「タグチメソッドについて一部でもいいので業務での応用例を教えて下さい。」(応用力を問うタイプ)

「はい、○○製品の熱蒸着工程の歩留まり向上のために、温度、プロセスガス種、触媒量、プロセスガス流量、雰囲気ガス種、処理時間、の6因子を水準2つ取り、L8直行表を用いた実験計画法により各因子の影響を調べました。その結果、調査前に歩留まりが60%だったものが70%に改善されました。」

  

とは答えられず、当時の私は「タグチメソッドとは田口玄一博士が開発した品質工学の技法です。」と答えました。相手はその道のプロフェッショナル。質問も知識を問うタイプではなく、業務での応用を問うタイプ。当然のように言われました。「いや、業務での応用例を教えてください。」

 

一瞬ですが頭が真っ白になった私はこう答えました。「すみません、ちょっと思いつきません。」

 

その他の質問は覚えていません。特に詰まることなく答えられたものは忘れますが、答えられなかったものは10年近くたっても忘れないものですね。

 

口頭試験でよく言われることがあります

「減点方式ではなく加点方式であるため、分からないときは分からないといった方がいい。但しそれは1回のみで2回以上分からないという答えがあると知識・経験不足とみなされて不合格とされる。」

私は2回「分からない」と答えました。それでも合格できました。最後まであきらめない姿勢は大事だと思いました。

 

筆記試験、口頭試験を突破して送られてきた技術士第二次試験合格証
写真 二次試験合格証 やっぱりめっちゃうれしかったな。

おまけ 論文の書き方

「序論」「本論」「結論」構成で書くように練習しました。私は技術士受験においては起承転結は使えないと思っています。

 

論文作成手順

①問題を読んだときに、思いついたキーワードを書き出します。

例題:開発期間短縮に有効な取り組みについて述べよ。

キーワード:コンカレントエンジニアリング、フロントローディング、3DCAD、CAM、CAE、3Dプリンター、、、

 

②実務例を書き出していきます。おおよそ本論に当たります。

○○部品のCAE解析、3Dプリンターでの試作、企画・設計・生産技術の同時進行、など。

 

③実務例の結果を書き出していきます。おおよそ結論に当たります。

新製品の開発時に生産技術と一緒になって同時に生産ラインの構築を進めたことで、一つ前のモデル開発時と比べておおよそ25%の工期短縮、40%の手戻り削減に繋がった。など。

 

④本論、結論で出てくるキーワードをベースに開発期間短縮について書きます。

おおよそ序論に当たります。

開発期間短縮のためには、複数の工程を同時並行で進めるコンカレントエンジニアリングが有効である。従来の開発の流れは次のようなウォーターフォール型が主流である。企画部隊から新製品の仕様を設計にわたり、設計はそれに基づき製品設計を行う。そして製品設計が完了すると図面や設計指示書として工場に渡る。工場では生産技術部隊が中心となって新製品の製造ラインを開発を行う。・・・(図にしてしまうのが良い。)

*②、③次第では、書き出しが「開発期間短縮のためには、開発初期に集中して負荷をかけるフロントローディングが有効である・・・」となることもあります。序論は本論、結論に合わせた書き出しになります。

 

⑤文章の作成

①~④は原稿には書かず、問題文の余白に殴り書きで書きます。そして序論、本論、結論のくくりを大まかに決めていざ文章を書いていきます。

時間配分としては①~④で60%、⑤25%、チェック15%くらいが目安でした。

1時間あれば、35分で構成を練り15分で文章を書き10分程度でチェック。うっかり見落としがちなのが名前・問題番号・答案枚数・技術部門・選択科目・専門とする項目の欄でした。

 

 

◆おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます。

実務に役立つ=資格の勉強に役立つ技術資料を日々アップしております。ぜひ併せてご覧ください。

技術資料一覧 

 

次回は設計知識 ボルト強度と安全率

 

前回は技術士資格取得のススメ

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