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◆安全率は設計者が決めるもの!

*本記事に出てくる数値はあくまで私がある局面で使用していたものです。

◆安全率を計算しよう!

本記事には次の3つについて書いています。

◆安全率設定の目的

◆安全率を決定する四つの視点

◆安全率の決定

◆安全率設定の目的

安全率を設定するのはあくまでも設計仕様を保証するためであり、安全を保障するものではありません。安全は基本設計の中で、使い方を基に強度計算やリスクアセスメントをしっかりと行うことで保証します。しかしながら、現実には設計値は理想であり必ず様々な要因によってバラつきが生じます。バラつきが生じても設計値が確実に出るように見込むものが安全率になります。

 

 私は数百トンの機械を解体して吊り上げるための吊りピースを何度も設計したことがあるのですが、計算条件を適当に設定したときに安全率を高く取ったから大丈夫という保証は全くありません。やはりまずはどのような形状のものかを限りなく再現できるような計算モデルを考えて1.計算方法を検討し、どのような環境で使い(2.荷重がばらつく要因を考える)、どのような材料を使うか(3.材料のバラつき考慮)、そしてどのような使い方をするか?をしっかりと検討したうえで強度計算をしてそれぞれがばらつく要因を考慮してさらに4.機能の重要性から安全率を決定していました。

◆安全率を決定する四つの視点

 安全率を決定する四つの視点は次の通りです。

 1.計算条件の簡素化による過小評価を想定する。

 2.荷重のバラつきを想定する。

 3.荷重を受ける材料のバラつきを想定する。

 4.機械の中で果たすべき機能を明確にする。

 

 

1.計算条件の簡素化による過小評価を想定する。

計算をする方法は大きく分けて2つ、3次元モデルでのCAE(Computer Aided Engineering)と手計算があります。解析精度という視点でそれぞれの計算方法をさらに分類します。分類したものを再現性高・中・低などの評価をしていきます。評価に基づき安全率を決定します。

特にCAEの評価についてはコチラ。ここでは数値化することが大切と言う事を押さえてください。

 

①CAE 高精細メッシュで計算する。 (再現性高)1.05~1.10

②CAE 低精細メッシュで計算する。 (再現性中)1.20~1.50

③手計算 計算対象に公式をそのまま当てはめて計算する。(再現性高)1.05~1.10

④手計算 計算対象に公式を単純なものに置き換えて計算する。(再現性中)1.2~1.5

⑤手計算 計算対象を簡素化して公式を当てはめて計算する。(再現性低)1.5~2.0

 

2.荷重のバラつきを想定する。

図1のようなフィルムなどを巻き取る機械における巻取り軸は典型的な図2のような形で等分布荷重を受ける梁の強度計算例です。

軸はベアリングで2点支持されて、突き出し部分に材料重量の等分布荷重を受けます。この時、b点に生じるモーメントMbは次の通り。

Mb=(wa^2)/2

 

フィルムを巻き取る機械の鳥瞰図です
図1 フィルム巻取り機
ベアリングで2点支持する突き出し梁にかかる等分布荷重
図2 等分布荷重を受ける突き出し梁

モーメントが分かれば軸の断面係数から応力が計算できます。σ=M/Z

以上が、材料重量が等分布で軸にかかるときの応力計算です。

実際には運転中、つまり軸の回転中は、材料重量に加えて巻取りの張力(これは設計値)ともう一つ、必ず振動による荷重のバラつきが発生します。軸そのものの製作で真円を作ることが不可能のため重心が回転中心とずれるからです。いわゆる偏心です。

偏心量から1回転での重心の移動量を算出すれば回転数から加速度と方向、そしてそれにより力を計算できますがそれは別のお話しとして、機械には運転荷重が存在すると言う事を押さえておいて下さい。

この運転重量は多くとも20%まで、通常は最大で10%程度を見込みます。20%と言わず15%(100㎏の重量で15㎏)を超えるようでは機械として不良品、構造を見直すべきです。

*回転などの駆動部が特に重要で別途解析した場合や、購入品で運転重量が明記されている場合を除く。

 

 ここでは10%~20%ほどばらつくとして安全率を1.1から1.2程度と見込みます。

 

3.荷重を受ける材料のバラつきを想定する。

板厚t6mm、SS400(Structure Steal)、16000mm以下の場合、±0.5です。6㎜±0.5、つまりは6mm±8.3%となります。

材料の誤差はJIS G3193を参照してください。大事なことが一つ。板厚というものは認められている公差の範囲内で、ほぼ確実にマイナスで出来ています。

素材メーカーの立場に立てば分かります。何千トンと鉄を作っている中で常に平均6㎜で作った場合と、平均5.7㎜で作った場合とでは材料コストに大きな差が出ます。

材料のバラつきはまず素材のバラつきを10%程度は見込みます。

例えば荷重を受ける部分に加工をしている場合は加工精度のバラつきを考慮する必要があります。ただし、加工精度は普通公差の極粗級(V級)ですら30㎜以上のものであれば5%以下です。(JIS B 0405参照)そこから工程能力を考慮するとほぼ無視してもよい数値だと思います。工程能力指数についてはこちら

材料のバラつきを10%程度見込むと安全率が1.1ですが、荷重を受ける方向によって(断面係数が変わるため)見込み量が変わります。最大で1.33になります。

 

この項では材料寸法が10%ほどバラつくとして、安全率1.1~1.3程度を見込みます。

 

4.機械の中で果たすべき機能を明確にする。

機能が停止したときの被害によって安全率を決めましょう。壊れても影響がない部分に大きな安全率を取るのはコスト増になるだけで無駄です。

 

①その機能が壊れたら重大災害に繋がる。5以上を見込む。

②その機能が壊れたら機械が全損しラインが停止する。3以上を見込む。

③その機能が壊れたら機械が停止しラインが一時停止する。1.5以上を見込む。

④その機能が壊れたら最低限の機能を保って安全に停止する。1.2以上を見込む。

⑤その機能が壊れても代替機能が働く。1.1以上を見込む。

⑥その機能が壊れても問題ない。1.0とする。

⑦問題があった時に優先的に壊したい箇所。他の部位と比べて最も小さくなるようにする。

 

最後の指標⑦はフォールトトレランスという設計思想です。別途解説記事アップ予定。

重大災害とは「不休も含む一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害」のことです。

 

◆安全率の決定

 1.項:④を選択し、1.2と設定する。

 2.項:中間の1.15と設定する。

 3.項:1.33とする。

 4.項:④を選択し、1.2と設定する。

 

条件は手計算で計算式を簡素化したもの、運転重量が変動する、材料の厚みがばらつく方向に荷重を受ける、壊れても安全側に停止する(フェイルセーフと言います。別途解説記事アップ予定)として、各数値は上記の通り。

このとき、安全率Sは次のようになります。

S=1.2×1.15×1.33×1.2=2.3(2.20248を繰り上げ)

 

次のブログはCAEの評価です。

前のブログは普通のボルト強度から安全率のお話しです。

 

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