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ボルトとボルトの間

◆ボルト間の押付力を計算してみよう

◆ボルトの軸力はよくあるけどボルト間の力ってあんまり見かけない。

図1のようにボルト8本で締め付けました。このときボルトとボルトの間、図2のハッチング(斜線)部分ってどれくらいの力で押し付けているのだろう?

昔々に、真空機器を設計していた時にすごく気になりました。JISには各種サイズのフランジがあり締め付け力などの計算方法や管理方法が規定されていますが、自分でシール構造を設計するときにこの部分が気になったので、材料力学の力を借りて計算してみました。

 

8本のボルトで締め付けるフランジの図
図1 フランジボルト
フランジを締め付けるボルトとボルトの間
図2 ボルトとボルトの間の圧力

◆ボルトの軸力から逆算する。

ボルトの軸力F(N)の導出は別の機会に譲るとして、M10の場合、適正トルクで締め付けるとおおよそ30,000Nほどになります。(3トンくらいの軸力)

図3のように2本のボルト間ピッチがLとすると、Lの両端に軸力Fが発生している状態です。

 

ボルト間の距離をLとします。
図3 ボルト間距離L

このとき[求めたい力]=[長さLに渡って発生する等分布荷重:w]と考えて軸力Fを両端(固定端)に発生する反力と考えます。

いわゆる両端固定梁にかかる等分布荷重の強度計算です。というわけで図3を図4のように置き換えます。

 

ボルト軸力を等分布荷重に置き換えたイメージです。
図4 等分布荷重に置き換え

改めて、wの等分布荷重を受ける長さLの両端固定梁として考えます。梁の強度計算の方法は別の機会に譲るとして、このとき両端の固定端に発生する反力Fは次の通りです。

 F=wL2

 w=FL

これは締め付けた段階でL間に等分布荷重wが発生しているというわけではなく、L間に等分布荷重でw以上の力がかかるとボルト軸力以上の反力が発生するためボルトが緩むなどの不具合が発生することがあるという意味になります。等分布荷重にはパッキンの圧縮力などを想定します。

 

ではM10のボルト2本をボルト間距離L=300で締め付けたときにどうなるか計算してみます。

◆ボルト間の押付力計算例

M10を適正トルクで締め付けるとおよそ30,000N(3トン)の軸力が発生します。このときボルト間の等分布荷重wを逆算すると次の通りです。

 w=2×30,000/300=200N/mm

幅10㎜(M10)に渡って発生すると仮定すると、200/10=20N/m㎡となります。

先に述べたように、この場合だとパッキンの圧縮力に200N/mm以上必要ならピッチやボルトサイズを見直さないとボルトが負ける可能性があると言う事です。

そして実際には面圧(20N/ m㎡)を求めることはほとんどありませんでした。なぜならこの計算はパッキンをつぶすための圧縮力を求めたいときに簡易的に使っており、その際には単位長さ当たりの力が必要だったからです。

さらに言うとよほど小さなサイズのボルトをよほど長いピッチとしない限り(例えばM3でピッチ1,000とか)はパッキンに対して充分な力となるため基本的には特に計算することもありませんでした。ざっくりいうとNBR線形Φ1.9のOリングを30%潰そうとすると3N/mm程度の圧縮力が必要です。

 

というわけでフランジ密封構造を設計するときはボルト間に発生する力はあまり気にせずに、内部で発生する内圧(外圧)とパッキンの圧縮力から必要な押付力を求めてそこからボルトの数と軸力を計算していました。つまり通常のフランジボルト設計です。

ご参考までに。

 

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