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伝熱 お湯と気温の感じ方は何故違うのか

先日Twitterで面白い投稿を見かけました。

図1 Twitterで見かけた投稿
図1 Twitterで見かけた投稿

これを見たときにふと疑問に思いました。

あれ?逆に96℃のお湯は触ることもできないのに96℃の気温は短時間であれば耐えられる。サウナとか。なぜだろう?

熱伝達の知識を使って解明してみようと思います。

 

◆熱伝達基本式

単位面積当たりの熱量q、熱伝達係数h、温度差ΔTとする。

 

q=h×ΔT

 

◆熱伝達係数

(一色尚次・北山直方共著 伝熱工学 森北出版より一部引用)

自然対流中の水 2.3~5.8×10^2

自然対流中の空気(高温度差) 4.7~11.6

自然対流中の空気(低温度差) 2.3~7.0

 

図2 Aさんの状態
図2 Aさんの状態

図2に示すようにAさんは何も運動をしていない状態で体温が36℃、気温が26℃のとき暑くもなく寒くもない、最も快適に感じるとします。

 

このとき、Aさんの体は生命活動を維持するために熱量qhを発しています。Aさんの体温と外気温には温度差ΔT=36℃―26℃=10℃があるため、Aさんの体から大気中へ熱量qaを放熱している状態です。

この発熱量qhと放熱量qaが同等のときにAさんが最も快適に感じるとします。

 

条件1:自然対流中の空気、気温25℃

自然対流中の空気の熱伝達係数を2.3とします。

図1の状態でAさんからの放熱量をまず求めます。

qh=h×ΔT=2.3×(26℃―36℃)=-23

 

qa +qh=0(qaとqhが同等)から、発熱量は23となります。

つまりAさんは生命活動を維持するために、23の発熱があります。

 

条件2:自然対流中の空気、気温35℃

放熱量を求めます。

qh=2.3×(35℃―36℃)=-2.3

 

条件1で見たようにAさんは23の発熱があり、今回の条件では2.3の放熱があります。その差21.7の発熱に対して何らかの方法(強制対流、つまり風を受けるとか、汗をかくとか)で放熱を促す必要があります。放熱量が足りていない状態。

 

一方で35℃のお湯の場合はどうでしょうか。

 

条件3:自然対流中の水、気温35℃

自然対流中の水の熱伝達係数を2.3×10^2とします。このときの放熱量は次の通りです。

qh=230×(35℃―36℃)=-230

 

つまり35℃のお湯につかると体温36℃のAさんからは230の熱量が放熱されます。Aさんの発熱量qhは23のためその差、23-230=-207の熱量が奪われてしまいます。これでは何かしらの熱量を上げるアクションを起こさない限り、体温が下がってしまいます。つまりぬるく感じるということです。放熱量が過剰な状態。

 

では次に96℃のお湯あるいは空気を見ていきます。

 

条件4:自然対流中の空気、気温96℃

今回は体温よりも外気温の方が高いため、放熱ではなく熱を受け取る、吸熱になります。吸熱か放熱かは計算結果の±で表されます。計算式は放熱の計算と同じです。吸熱量を求めます。

qh=2.3×(96℃―36℃)=138

 

つまりサウナの中では138の熱量を受け取ることになり、この状態にいると徐々に体温が高くなっていくことになります。

     (その熱を放熱するために汗が出る。)

条件5:自然対流中の水、温度96℃

熱量計算です。

qh=230×(96℃―36℃)=13,800

 

条件4と比べて桁違いの熱量を受け取ることになります。急激に熱量を受け取ることで皮膚の温度も急速に高まり、熱さを感じるものと思われます。

 

 

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