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鉄の歴史2/2

鉄の歴史 その②

鉄の期限

今から約138億年前にビッグバン(あるいはインフレーション)が起こったと言われています。

これにより物質が何もない状態から原子の元となる陽子や中性子が生まれて、それらが結びつくことでヘリウムの原子核が生まれました。

この時点ではまだ世界は陽子、ヘリウム、電子、電磁波が自由に飛び回る世界でした。

ここから約38万年ほどが経過したころ、原子核に電子がひきつけられて水素やヘリウムの原子ができました。

しばらくは水素やヘリウムが漂っていましたが、やがて部分的に集合してガス状の雲となりさらに凝縮して光り輝く恒星となりました。

恒星の内部で何が起こっているか。核融合です。内部では新たに陽子や中性子の結合が進み、水素やヘリウム以外の元素、例えばLiBeB・・・といった元素が次々と生み出されていきました。

反応が起きるたびに熱が生じ、その熱でさらに反応が進む。次々と新しい元素が生み出されていきましたが、やがてこの反応は「鉄(Fe)」で終わりました。

端的に言うと鉄が全元素の中で最も安定した元素だからです。

 

このため核融合反応は鉄で終わりになりました。

 

 

隕石由来の鉄と地上の鉄

このあとさらに恒星の内部はさらに温度・圧度がどんどんと高まっていき最終的に大爆発を起こします。超新星爆発です。

このときに生じるエネルギーで、さらに核反応が起こります。そうして原子番号で鉄以降の元素、コバルト(Co)やニッケル(Ni)、CuZnGa・・・などの元素が生み出されていきました。

(より重たい元素はまた別の現象が作用することで生成されていきます。)

そして星屑となって宇宙に飛び散り漂うことになります。

この星屑の一部が漂う中で偶然、地球にたどり着いて隕石として降り注いだときに、コバルトやニッケルを含む鉄、隕石由来の鉄、隕鉄として地上に残ることになります。

 

一方、約50億年前にあるところで水素とヘリウムが集まって恒星を作ります。太陽です。

太陽の引力にひかれて周辺の星屑がだんだんと大きな塊を作っていきます。惑星です。

地球は太陽系の惑星の中では比較的に太陽に近い位置にあるため、重たい元素が集まって形成されました。つまり鉄をたくさん含む星。地球は鉄、ケイ素、マグネシウムの酸化物などから構成されていて、最も量が多いのが鉄。総重量の約34.6%を占めます。

 

古代の地球には酸素がほとんどなく、地表には酸性雨が降り注いでいます。地上にある鉄分がこの酸性雨に溶けて海に流れ込んでいきました。

この時期の海は鉄分がたくさん溶け込んだ状態でした。

いまから約30億年~27億念前。

海中にシアノバクテリアが生まれました。

シアノバクテリアは光合成を行います。

つまり酸素を生み出します。

こうして海中に酸素が発生し、その一部は海中の鉄分と結びついて酸化鉄を形成します。この酸化鉄が海底に堆積していきます。

そしてまた長い年月をかけて、地殻変動により海底が隆起して酸化鉄が地上に表出することになります。

このような過程を経るため地上で採れる鉄は酸化鉄でありコバルトやニッケルを含まないものとなっています。

 

隕石由来の鉄と地球由来の鉄には以上のような違いがあります。

 

そしてこれにより、コバルトやニッケルを含むツタンカーメン王の短刀は隕鉄である。それらを含まず、炭素を含むヒッタイトの鉄は地球由来で採られた酸化鉄を精錬し炭素を若干含有させることで人工的に作られた鋼であるということがわかります。

 

参考文献

「ヒッタイトに魅せられて」

 山川出版社

 大村幸弘、篠原千絵 著

 

「世界史は化学でできている」

 ダイヤモンド社 

 左巻建男 著

 

「機械実用便覧」

 日本機械学会

 

「鉄の起源」

 日本製鉄株式会社HP

 

「最古の鋼片の検出とその意味」

 岩手県立博物館だよりNo.106

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