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技術士一次試験 専門科目 機械部門 R1 Ⅲ-35

令和1年

Ⅲ-35

圧力勾配のない空気の一様流中で、流れに平行に置かれた半無限平板上に発達する境界層に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

① 境界層の特性を表現するために、粘性作用による流量の欠損を表す排除厚さや運動量の欠損を表す運動量厚さが用いられる。

 

② 平板の前縁から発達する層流境界層では、その厚さδが近似的にδ≅5.0(vx/U)と表される。ただし、xは平板先端からの距離であり、空気はxの正方向に流れている。また、流れ方向速度をU、動粘性係数をνとする。

 

③層流境界層は、平板に沿った流れ方向に次第に厚くなり、臨界レイノルズ数を超えると、乱流境界層となる。

 

④境界層の厚さは、速度が一様流の90%に達する位置で定義される。

 

⑤乱流境界層には壁面の影響が著しい壁領域(内層)があり、内層はさらに3つの領域から成り、壁面側から粘性低層、緩和層(バッファ層)、対数層(対数領域)と呼ばれる。

 

 

解答

 

 

解説

[解答に必要な知識]

物体回りの流れにははく離を生じるものとはく離が生じないものとがあります。

35.1にはく離が生じる場合の物体表面の流れについて示します。

 

図35.1 はく離が生じる物体回りの流れ
図35.1 はく離が生じる物体回りの流れ

物体に速度Vの流体が衝突すると、物体表面で速度がゼロになるような勾配ができます。この勾配層を速度境界層と呼びます。流れが下流にいくとはく離、物体表面付近で流れが逆流する状態、が生じます。さらに下流にいくと再付着が生じます。

代表的なはく離の例としてカルマン渦があります。

 

 

 

35.2にはく離を生じない物体回りの流れを示します。

 

図35.2 はく離を生じない物体回りの流れ
図35.2 はく離を生じない物体回りの流れ

境界層内の流れ速度が境界層外の速度V99%に達する物体表面からの距離を境界層の厚さδと定義されています。

また、境界層の特性を表現するために流量の欠損を表す排除厚さや運動量の欠損を表す運動量厚さが用いられます。

 

 

35.3にはく離を生じない物体回りの流れでも特に平板上の流れを示します。

図35.3 平板上の流れ
図35.3 平板上の流れ

平板上の流れでは層流域において、境界層厚さはδ=4.64(Vx/U)となります。

 

*図35.135.3は覚えておきましょう。

 

では問題を解いていきます。

 

①正しいです。

②層流の場合の境界層厚さとして正しいです。

③正しいです。

④誤りです。正しくは99%です。

⑤正しいです。   //