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技術士一次試験 専門科目 機械部門 R3 Ⅲ-14

令和3年

Ⅲ-14

図に示すフィードバック制御系を考える。ここでR(s)Y(s)E(s)は、それぞれ目標値r(t)、出力y(t)、偏差e(t)のラプラス変換であり、E(s)=R(s)-H(s)Y(s)で表される。定常偏差はlime(t) [t→∞]であり、G(s)H(s)は次式のように定められている。

 

 G(s)H(s)=(s+2)/(s3+2s2+2s+1)

 

目標値を単位ステップ入力とするとき、定常偏差として、適切なものはどれか。

 

注意!

この問題における系の伝達関数はG(s)/1+G(s)H(s)]となります。問題文でG(s)H(s)は与えられていますが、G(s)は与えられていないため、この問題を解くことはできないように思います。

もし仮に、図14.1に示すようにG(s)H(s)が直列で結合されていれば、その伝達関数はG(s)H(s)/1+G(s)H(s)]となり、解くことができます。

ここでは図14.1の状態であるとして解説を進めていきます。

  

解答

 

図14.1 直列結合の例
図14.1 直列結合の例

[解くために必要な知識]

平成22年度に類似の問題が出ています。(Ⅳ-18

 

◆フィードバック制御における定常偏差の定義

「フィードバック制御系の入力x(t)と出力y(t)の差が偏差e(t)=x(t)-y(t)であり、時間が無限大の時の偏差を定常偏差または残留偏差と呼ぶ。」

 

◆最終値定理

最終値定理とはシステムの定常値(収束した値)を求める定理で次式で表されます。

 lim f(t)=lim sF(s)

t→∞ 、 s0

 

 

図14.2 代表的な入力と応答
図14.2 代表的な入力と応答

◆単位ステップ入力

14.2に示すように、ある時間t以降1が入力されるようなものを(単位)ステップと言います。

同図に併せて示すように、ある時間tの瞬間的な∞の入力をインパルス、時間経過に比例して増加する入力をランプと言います。

 

インパルス入力f(t)をラプラス変換するとF(s)=1

ステップ入力f(t)をラプラス変換するとF(s)=1/s

ランプ入力f(t)をラプラス変換するとF(s)=1/s2

となります。

 

*さかのぼると平成22年に類似が出ていることからも分かるように、最終値定理に関する問題は出題率が低いです。余力があれば覚えておきましょう。

フィードバック制御系の伝達関数の求め方、入力形態(インパルス、単位ステップ、ランプ)やそのラプラス変換は覚えておきましょう。

 

 

では問題を解いていきます。

 

14.1の状態における伝達関数は次の通りです。

 G(s)H(s)/1+G(s)H(s)

入力は単位ステップ入力であり、そのラプラス変換はR(s)=1/sとなります。

 

よって、出力のラプラス変換Y(s)は次の通りです。

 

 Y(s)=G(s)H(s)/1+G(s)H(s)]×1/s

 

最終値定理から、

 lim y(t)=lim sY(s)=lim G(s)H(s)/1+G(s)H(s)

(y→∞ 、 s0)

 

ここで問題より、G(s)H(s)=(s+2)/(s3+2s2+2s+1)を代入します。

 

lim y(t)=lim (s+2)/(s3+2s2+2s+1)/1+(s+2)/(s3+2s2+2s+1)

 lim y(t)=lim (s+2)/(s3+2s2+2s+1+s+2)

 lim y(t)=lim (s+2)/(s3+2s2+3s+3)

  s0より、

  lim y(t)=2/3

 

定常偏差は入力(単位ステップ=1)と出力(2/3)の差であるため

 

 

 e(t)=1-2/3=1/3  //