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技術士一次試験 専門科目 機械部門 R3 Ⅲ-31

令和3年

Ⅲ-31

円管内の完全に発達した流れを考える。流体はニュートン流体とし、断面平均流速、管の直径により定義されるレイノルズ数をReとする。また管内の壁面は流体力学的に十分に滑らかであるとする。この流れを説明する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

① 流れが層流のとき、管摩擦係数は64/Reとなる。

② 通常、レイノルズ数か2300程度を超えると、流れは層流から乱流に遷移する。

③ 同じレイノルズ数において、流れが層流から乱流へ遷移すると管摩擦係数は大きくなる。

④ 乱流域では、レイノルズ数の増加とともに管摩擦係数は大きくなる。

⑤ 乱流域では、流れに不規則な渦運動が励起され、流体の混合が促進される。

 

 

解答

 

解説

[解くために必要な知識]

円管内を流れる流体は管壁との摩擦により圧力損失が発生します。この摩擦による圧力損失Δpは管摩擦係数λを用いて次のように表されます。lは流路長さ、dは流路の内径、Vは流速、ρは密度です。

 Δp=λlρV2/2d

 

円管内を流れる流体はレイノルズ数が2300を超えると乱流となります。2300未満で層流の場合は管摩擦係数がλ=64/Reとなります。

 

レイノルズ数が2300を超える乱流域における管摩擦係数は次の実験式がよく知られています。

 

1.ブラジウスの式(Re=3×1031×105)

 

 λ=0.3164Re-1/4

 

2.ニクラーゼの式(Re=1×1053×106)

 

 λ=0.0032+0.221Re-0.237

 

いずれの式もレイノルズ数の増加とともに管摩擦係数は減少していきます。レイノルズ数と管摩擦係数の関係をグラフ化したものを図31.1に示します。

(森北出版株式会社 水力学 宮井善弘、木田輝彦、仲谷仁志、共著より引用)

 

*乱流の管摩擦係数の式は覚えなくてもいいと思いますが、その傾向(レイノルズ数の増加とともに減少)や層流の管摩擦係数などは覚えておきましょう。

 

 

図31.1 レイノルズ数と管摩擦係数の関係
図31.1 レイノルズ数と管摩擦係数の関係

では問題を解いていきます。

 

① 流れが層流のとき、管摩擦係数は64/Reとなる。

正しい

 

② 通常、レイノルズ数か2300程度を超えると、流れは層流から乱流に遷移する。

正しい

 

③ 同じレイノルズ数において、流れが層流から乱流へ遷移すると管摩擦係数は大きくなる。

正しい

31.1においてレイノルズ数2300近傍を確認すると、同じレイノルズ数において層流から乱流に遷移することで管摩擦係数が大きくなっていることがわかります。

 

④ 乱流域では、レイノルズ数の増加とともに管摩擦係数は大きくなる。

不適切です。レイノルズ数の増加とともに管摩擦係数は小さくなります。

 

⑤ 乱流域では、流れに不規則な渦運動が励起され、流体の混合が促進される。

 

正しい    //