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技術士一次試験 専門科目 機械部門 R3 Ⅲ-9

令和3年

Ⅲ-9

ねじりモーメントのみを受ける丸軸の表目の応力状態を表すモールの応力円として、最も適切なものはどれか。ただし、垂直応力σを横軸、せん断応力τを縦軸に取る。

 

 

 

 

解答

 

解説

 

[解くために必要な知識]

 

図9.1 平面応力状態
図9.1 平面応力状態

9.1に示すようにある材料に2方向の力が作用しているとき、内部の微小空間に着目します。この微小空間を角度θをもつ三角柱とします。

2方向の力;x,y方向の2方向。x-y平面に垂直なz方向には力が作用しない。

xyそれぞれには垂直のσx、σy あるいはせん断のτxy、τyxが作用する。

 また、τxy=τyx となる。もしこの等式が成立しないなら、回転することになる。

 

この三角柱の斜面には斜面に対して垂直方向に垂直応力σ(σx、σy)が、斜面と平行方向にせん断力τ(τxy、τyx)が発生します。

いまこのθの取り方をゼロから360°まで変化させるとσとτの値も変化します。σの最大/最小を最大/最小主応力σ1/σ2と言います。τの最大/最小を最大/最小主せん断応力τ1/τ2と言います。

 

σ1,2=(σx+σy)/2 ± 1/2×√[(σx-σy)2+4τxy2]

τ1,2=±√{[(σx-σy)/2]2+τxy2}=±1/2(σ1-σ2)

 

 

このσとτの関係をグラフ化したものがモールの応力円です。モールの応力円の例を図9.2に示します。

 

図9.2 モールの応力円の例
図9.2 モールの応力円の例

9.2に示す例のようにモールの応力円では通常縦軸にτ、横軸にσを取り、それぞれ下方向と右方向をプラス方向とします。

 

応力円の半径は(σx-σy)2/4、中心の位置は(σx+σy)/2 となります。回転角度は2θとなります。

 

つまり作用している応力の方向に対して、135°の位置で発生している主応力とせん断応力を知りたければ応力円においては270°の位置を確認します。

 

図の例では主応力σは中心位置にありその値は(σx+σy)/2、せん断応力τは最小値τ2を取ります。ただし、この場合は最小値ですが円の中心がτ=0の位置にあるためτ2の絶対値は最大となります。つまりマイナス方向に大きなせん断力が発生していることになります。

 

さらに45°でせん断力はτ1を取ります。

 

整理すると、45°あるいは135°でせん断応力の絶対値が最大となります。仮にこの材料がせん断破壊を起こすとすれば、45°あるいは135°方向に亀裂が入ることになります。

 

垂直方向を見ると、90°(モールの応力円では180°)で最大主応力σ10°で最小主応力σ2を取ります。応力の値はこの場合どちらも+をとっており絶対値を見たときも最大はσ1となります。

 

仮にこの材料が垂直方向に破壊を起こすとすれば、σxに対して90°の方向に亀裂が入ることになります。

 

ねじりモーメントを受ける軸、引張力を受ける軸、引張力とせん断力を受ける3つのパターンにおけるモールの応力円を図9.3~図9.5に示します。

 

 

図9.3 ねじりを受ける丸棒の応力円
図9.3 ねじりを受ける丸棒の応力円
図9.4 引張力を受ける丸棒の応力円
図9.4 引張力を受ける丸棒の応力円
図9.5 x軸に引張力とせん断力を受ける軸の応力円
図9.5 x軸に引張力とせん断力を受ける軸の応力円

*最大/最小主応力、最大/最小せん断応力の式と代表的なモールの応力円は覚えておきましょう。

 

では問題を解いていきます。

 

問題はねじりモーメントのみを受けるとなっていますので、そのモールの応力円は①になります。  //