座金の存在意義を考える。

◆座金は要らない子なのか?!

◆はじめに

この記事に書かれているのは次の三つです。

1.平座金を使う理由⇒よく言われていることです。私の考えは場合によって意義あり。

2.ばね座金のゆるみ止め効果⇒これもよく言われていることです。私の考えは意義なし。

3.ばね座金を使うことで得られるもの⇒見かけたことはありません。この記事オリジナルの内容だと思います。

 

1.平座金を使う理由は主にこれ。力の分散。

図1に示すようにボルトで被締結物Aをタップ(めねじ)のあいた被締結物Bに締結することを考えます。用語を2つ定義しておきます。ボルト頭の下面、被締結物との接触面を座面と呼ぶこととします。図2のように座面が被締結物Aに接触した瞬間を着座と呼びます。

ボルトと被締結材のイメージ図です。
図1 ボルトと被締結材
着座の状態つまりボルト座面が被締結物と接触した状態のイメージ図です。
図2 ボルト座面が被締結物と接触した状態

ボルトが着座するまではボルトの回転にはほとんどトルクを必要としませんが、図3に示すように着座してからさらに締めこむためには高トルク=締付トルクが必要になります。このトルクによりボルト本体には軸力が発生し、座面にはその反発力が発生します。この力が被締結材を締結する締結力になります。つまりボルトが緩んだ状態とは軸力が失われた状態と言えます。

ここで、軸力と反発力により被締結物の材質などによっては図4のように陥没してしまうことがあります。また、材質だけの問題ではなく長穴やボルトサイズに対して極端に大きな穴サイズにしている場合は座面の接触面積が小さい(いわゆるかかりが浅い状態となる)ため陥没してしまうこともあります。

 

ボルトに発生する軸力と反発力のイメージ図です。
図3 ボルトに発生する軸力と反発力
ボルト座面が陥没した状態のイメージ図です。
図2 ボルト座面が陥没した状態

平座金を入れることによる力の分散イメージ図です。
図5 平座金による分散効果

このような場合に図5のように接触面積を増やして反発力を分散させるための要素として平座金は有効です。

 

一方で材質は硬度があり穴サイズも小さい、例えば被締結材がSUS304で穴サイズも3級以上(例:M6ボルト用穴の1級はφ6.4、2級はφ6.6、3級はφ7)を使用しているような場合は平座金を入れる必要性はあまりありません。

 

平座金を使用する目的は、被締結材との接触面積を増して陥没を防ぐことにあります。

 


2.ばね座金にゆるみ止め効果はほとんどない?!

「ばね座金 効果」「ばね座金 用途」などで検索をしてみてください。ばね座金を使う目的はゆるみ止めと書かれたページがいくつか出てくると思います。しかしばね座金にゆるみ止め効果はあまり期待できません。というか私は期待してはいけないものであると思っています。

ここで、ばね座金のゆるみ止めはばね力の効果と食い込みの効果の2つが期待されています。それぞれ確認していきます。

 

(1)ばね力によるゆるみ止め。

仮に効果があったとしても、はっきり言ってあまり大きな効果は期待できません。理由はばね座金で発生する力よりもねじ・ボルトを締めつけたときに発生する軸力の方が大きいからです。例えばM6のボルトを適正トルクで締め付けると400kg~500kgほどの軸力が発生します。一方でばね座金の反発力は私がペンチでグッと挟むと閉じる程度ですのでせいぜい数十kg、つまり10%もありません。

 

ばね座金を組み込んだボルトを締めたことがある方なら、ばね座金が閉じるまでにかけるトルク(必要な力)よりも、そこからさらに締めこむトルク(必要な力)の方がはるかに大きいことは分かっていただけるのでないでしょうか。このようにばね力はボルト本体が生み出す軸力に比べて小さなものになります。ボルトが緩んだ状態とは軸力が失われた状態でした。つまり軸力に比べてとても小さなばね力の効果はあまり無い、期待できないということになります。

 

そしてこれが最も大事なことですが、ばね座金のばね力(ばね定数)は規定されていません。外径や板厚など寸法の規定があるのみです。肝心のばね力を期待するための開き具合は図6に示すように約2tとあいまいです。これではばね力を期待してゆるみ止めとするための肝心な効果を見積もることができません。ある個体はゆるみ止めの効果があるほどのばね力を持っているかもしれないし、別の個体には無いかもしれないというものになります。このような要素を「ゆるみ止め用途」として使用することはあまり適切ではないと私は思っています。

 

ばね座金の正面図です。
図6 ばね座金の正面図

(2)ばね座金が被締結物とボルトに食い込む。

ばね座金は図7に示すようにボルトを緩める方向にまわそうとすると食い込む方向に作られています。ただしこれはボルトを緩める方向にまわす力が加わった時に得られるかもしれない効果になります。食い込みの効果はそもそもばね力と食い込みを期待する部分の形状に依存します。この肝心のばね力と形状が規定されていません。つまり食い込み効果はあるかもしれないし、無いかもしれない。やはりこのような要素を「ゆるみ止め防止」として使用することはあまり適切ではないと私は思っています。また、ばね座金を使用する際、多くの場合で平座金もセットで使用されています。この場合、被締結材への食い込み効果は全く見込めません。

 

ちなみにボルトが緩む原因には緩める方向にまわそうとする力が加わる以外にも被締結材のへたり、ボルトの伸びなど、直接軸力が失われることもあります。このときは食い込み効果は全く意味をなさないことになります。

 

ばね座金がボルトと被締結材に食い込むイメージ図です。
図7 ばね座金の食い込み効果イメージ

ここでの結論は、そもそもばね座金にばね力を期待したところで肝心のばね力が規定されていないため効果があるのか無いのか分からない、ある個体はばね力が強いけれどある個体はばね力が弱いというあいまいな要素であるため「ゆるみ止め効果」を期待してはいけないというものになります。

3.ばね座金を使うことで得られるもの

(1)最後の粘り

仮にボルトが伸びたり被締結材がへたるなどの理由で軸力が失われたとしても、物理的に戻り回転が加わってボルトと被締結材の間にすき間が発生しない限りはばね座金は閉じたままになります。これによりばね座金のばね力は発生したままとなるのでその分の締結力は残ります。これが最後の粘りです。

 

(2)ばね座金は自動ねじ締め機で役に立つ!

ばね座金を入れることで、締め付け時のトルク波形が変わります。これにより「着座直前を検知すること」ができるようになります。これはボルトではなく十字穴付なべ小ねじを自動で締めつけるときにとても役に立ちます。ばね座金が入っていない場合、ねじ締め開始からねじ締め完了(設定トルク到達)までのトルク波形は図8のようになります。着座まではほとんど抵抗が無く(あるのはおねじとめねじの摺動抵抗くらい)低トルクで回りますが、着座した瞬間にいきなり大きなトルクが発生します。例えば600rpm程度の高速で回転させてねじ締めを行うと、着座した瞬間の衝撃が大きくなってしまい締め付け力が不安定になります。場合によってはねじ頭をなめる現象が頻発してしまいます。だからと言って最初から50rpm程度の低速回転としてしまうとねじ締めに時間がかかってしまいます。

 

ばね座金を使わないずにねじの締め付けを行ったときのトルク波形イメージ
図8 ばね座金が無いときのトルク波形

ばね座金を入れることでトルク波形は図9のようになります。着座の前にばね座金が効き始めてトルクが少し高くなります。そして着座に至り大きなトルクが発生します。ばね座金が効き始めるまでを仮締めと定義して、ばね座金が効き始めてからを本締めと定義します。仮締めを高速回転低トルク設定で回転させて、本締めを低速回転高トルク設定で回転させることで素早くかつ安定したねじ締めを行うことができます。

十字穴付なべ小ねじにはセムス小ねじというばね座金と平座金が組み込まれたものがあります。自動ねじ締めではこのセムス小ねじを使用し、ねじ締めトルク波形を確認することで素早く安定したねじ締めを行うことができます。

 

ばね座金を使用すると着座前にトルクが高くなります。
図9 ばね座金を使用したときのトルク波形イメージ

(3)仮組・微調整がやりやすい。

ばね座金が無いと締付時には上記のようにいきなり軸トルクが上がってしまいますが、ばね座金があることでそのばね性で被締結物を軽く固定することができます。特に微調整を行いたいときなどは、この軽く固定した状態、仮組状態にしてハンマーなどでコンコンたたくと微調整がやりやすくなります。

◆おわりに

ねじやボルトにはばね座金と平座金を組合わせることが当たり前になっていませんか?実際に組み立てを行うと座金類は結構面倒くさいです。【面倒くさい=手間がかかる=時間がかかる=コストがかかる】ということになります。そもそも座金にも購入コストがかかります。たかが座金されど座金。その座金はなぜ必要か?答えられないようであればその座金は無くてもいいのかもしれません。

 

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